【基礎知識】全国菓子大博覧会とは?お菓子の祭典が持つ本当の意味
全国菓子大博覧会は、全国各地の菓子メーカーや老舗和菓子店、洋菓子店、菓子職人が参加する全国規模の博覧会です。一般には「菓子博」と呼ばれ、全国菓子工業組合連合会や開催地の菓子工業組合などが中心となって運営します。
最大の特徴は、単にお菓子を販売するイベントではないことです。主な目的は次の3つに整理できます。
- 菓子文化の発信: 全国各地の伝統菓子や地域限定商品、独自の製法を紹介する。
- 製造技術の評価: 一般販売されているお菓子や職人の工芸菓子を審査し、優れた作品を表彰する。
- 地域経済の活性化: 開催地の観光、飲食、宿泊、交通、地場産業を盛り上げる。
開催地は全国各地を巡り、原則として約4年に1度のペースで開催されてきました。ただし、戦争や新型コロナウイルス感染症の影響などによって、開催間隔が延びた時期もあります。
1911年の帝国菓子飴大品評会が原点
全国菓子大博覧会の歴史は、1911年(明治44年)4月に東京で開催された「第1回帝国菓子飴大品評会」から始まります。
当時の出品数は2,506点。羊羹などの棹物を中心に、ビスケット、ボーロ、あめ菓子、落雁、金平糖、カステラなど、さまざまな種類のお菓子が集まりました。
その後、1919年の第3回大会から「全国菓子飴大品評会」という名称になり、1935年の第10回仙台大会から現在の「全国菓子大博覧会」という名称が使用されています。
第二次世界大戦による中断を経験しながらも、菓子業界の関係者によって受け継がれてきた点も、この博覧会の特徴です。
農畜産業振興機構が公開した菓子博の歴史資料でも、1911年から続く日本の菓子産業における重要な催しとして紹介されています。
【歴代開催地一覧】第1回東京から第29回岐阜・大垣までの歩み
全国菓子大博覧会は、開催地を固定せず、全国の都市を巡ってきました。
その歴代開催地を見ると、各地域の菓子文化を全国へ紹介するという博覧会の役割がよく分かります。
特に注目したいのは、1928年に第7回大会が岐阜市で開催されていることです。2029年の第29回大会は岐阜県で約1世紀ぶりの開催となります。
全国菓子大博覧会の歴代開催地・年表
出典:全国菓子工業組合連合会「お菓子何でも情報館」の開催一覧を中心に整理。第29回は2026年8月の開催地決定発表に基づく。
歴代開催地から見える3つの転換点
1. 1935年の名称変更
第10回仙台大会から現在の名称が採用されました。菓子の品評会という性格に加え、全国的な菓子文化の展示・発信という位置づけが明確になっていきました。
2. 戦後の再開と全国への広がり
戦後は1952年の横浜大会から再開。京都、長崎、名古屋、秋田、札幌などへ開催地を移しながら、各地域の菓子産業を紹介してきました。
3. 2017年から2025年までの8年間
第27回お伊勢さん菓子博2017の後、新型コロナウイルス感染症の影響などで次回大会の開催が延期されました。
その結果、あさひかわ菓子博2025は8年ぶりの開催となりました。通常の約4年周期とは異なる、近年の大きな転換点です。
【第28回あさひかわ菓子博2025】来場者数26万人超の実績を検証
2025年5月30日から6月15日まで、北海道旭川市で開催されたのが、第28回全国菓子大博覧会・北海道「あさひかわ菓子博2025」です。
大会テーマは「SMILE SWEETS HOKKAIDO」。
北海道の豊かな農産物や菓子原材料、地域に根付くお菓子づくりの文化を全国へ発信することが大きな目的でした。
公式発表による来場者数は261,336人
2025年7月3日、実行委員会は公式サイトで最終的な来場者数と入場券販売枚数を公表しました。
延べ来場者数(2会場合計)
当初の来場目標20万人を上回る実績
メイン会場
道北アークス大雪アリーナ
サブ会場
旭川地場産業振興センター
前売券販売
126,754枚
当日券販売
48,773枚
入場券販売合計:175,527枚。来場者数とは別の集計値。
ここで注意したいのは、26万1,336人という数字が、メイン会場とサブ会場を合わせた延べ来場者数であることです。
一方、農畜産業振興機構の紹介記事では、メイン会場の来場者数を約15万人としています。これは集計対象の違いによるもので、数字が食い違っているわけではありません。
また、入場券の販売枚数17万5,527枚と来場者数26万1,336人も別の指標です。記事やSNSで大会の規模を比較するときには、集計対象を確認する必要があります。
約1,200点の一般菓子と90作品の工芸菓子
あさひかわ菓子博2025では、全国から集まった多彩なお菓子が展示・販売されました。
主な見どころは次のとおりです。
- 一般菓子の審査対象:約1,200点
- 大型工芸菓子:90作品
- 全国スイーツマーケット:約1,000品
- 大手菓子メーカー7社による体験型パビリオン
- 北海道の食材や菓子文化を紹介する展示
- お菓子の包み紙を使った折り鶴やプロジェクションマッピング
特に工芸菓子は、全国の菓匠が伝統技術を駆使して制作した大型作品です。和菓子だけでなく洋菓子の技術も披露され、菓子職人の表現力を間近で見られる機会となりました。
コンパクトな開催モデルも成果の一つ
今回の大会で見逃せないのが、運営規模の見直しです。
実行委員会の報告によると、あさひかわ菓子博2025は従来の大会規模の約3分の1程度にコンパクト化し、持続可能な運営を目指しました。
開催期間も17日間に設定され、会場や企画を効率的に組み合わせています。
これは単にイベントを小さくしたという話ではありません。大規模な自治体負担や運営コストを抑えながら、菓子文化の発信と地域経済への効果を両立させようとする試みです。
次回の大垣大会でも、持続可能な開催モデルの構築が基本方針に含まれており、旭川大会の経験が今後の運営を考えるうえで重要な参考になります。
【第29回全国菓子大博覧会】2029年は岐阜県大垣市で開催!
2026年の大きなニュースとなったのが、第29回全国菓子大博覧会の開催地決定です。
2026年8月21日、栄光堂ホールディングスが発表した開催決定に関するプレスリリースによると、次回大会は岐阜県大垣市で開催されます。
岐阜県での開催は、1928年の第7回岐阜大会以来、約100年ぶりです。
2029年の開催概要
愛称
ぎふ菓子博in大垣2029(仮)
開催期間
17日間
開催場所
岐阜県大垣市
メイン会場
大垣市総合体育館
サテライト会場・開会式会場
- ソフトピアジャパンセンター
- 大垣市情報工房
大会テーマ
世界に届け!にほんのおかし-伝統とイノベーション-
コンセプト
むすびの地 大垣から 日本のお菓子で世界を結ぶ
出典:2026年8月21日 栄光堂ホールディングス発表資料。大会名称・愛称はいずれも仮称。
なぜ開催地に大垣市が選ばれたのか
大垣市は、岐阜県西部に位置する水の豊かな都市です。
豊富な地下水に恵まれていることから「水の都」と呼ばれ、水まんじゅうをはじめとする地域の菓子文化が根付いています。
また、松尾芭蕉の『奥の細道』の旅の終着地として知られ、「奥の細道むすびの地」という歴史的な特色も持っています。
今回の大会では、この「結び」という地域の象徴的な意味がコンセプトにも取り入れられています。
開催地決定の背景には、岐阜県菓子工業組合による立候補がありました。その後、全国菓子工業組合連合会の総会で承認され、全国菓子大博覧会協議会で満場一致により決定したと発表されています。
9月開催に込められた岐阜のお菓子文化
今回の開催時期が9月に設定されたことにも理由があります。
岐阜県菓子工業組合の鈴木伝理事長は、開催時期について、岐阜県内の銘菓がそろう季節であることを説明しています。
特に注目されるのが次のお菓子です。
水まんじゅう
地下水に恵まれた大垣を代表する夏の和菓子。透明感のある涼やかな見た目が特徴です。
栗きんとん
岐阜県東濃地方などで親しまれる秋の銘菓。栗本来の風味を生かした季節感のある和菓子です。
鮎菓子
鮎の形をかたどった岐阜の代表的な菓子。地域の川や自然をモチーフにした商品です。
駄菓子
昔ながらの製法や地域の菓子店の歴史を伝える、岐阜の菓子文化を語るうえで欠かせない存在です。
大垣の地域性を生かしながら、全国の銘菓を集める構成になることが期待されます。
2029年に向けた今後のスケジュール
2026年10月現在、開催地と会期、主要会場、テーマは発表されています。
一方、入場料金やチケット販売開始日、具体的な展示内容、来場者目標などは、今後の発表を待つ段階です。
現在公表されている準備上の予定として、2027年1月12日に東京で開催予定の全国菓子工業組合連合会新年会において、博覧会旗の伝達式を実施する計画があります。
北海道菓子工業組合の長沼昭夫理事長から、岐阜県菓子工業組合の鈴木伝理事長へ旗が引き継がれる予定です。
【受賞制度を徹底解説】名誉総裁賞・内閣総理大臣賞・農林水産大臣賞とは?
全国菓子大博覧会を語るうえで欠かせないのが、菓子の審査と褒賞制度です。
全国の菓子店にとって、菓子博での受賞は商品の品質や技術を広く知ってもらう大きな機会になります。
特に、名誉総裁賞や内閣総理大臣表彰、農林水産大臣賞などは、業界内でも高い評価を受ける賞です。
一般菓子褒賞部門とは?
一般菓子褒賞部門は、通常販売されているお菓子を対象とする審査です。
和菓子や洋菓子、せんべい、飴菓子、米菓など、幅広いジャンルの商品が対象になります。
審査対象となるのは、単に見た目が美しいお菓子だけではありません。味や品質、商品の完成度、菓子としての魅力などが評価されます。
あさひかわ菓子博2025では、約1,200点の商品が審査対象となりました。
工芸菓子褒賞部門とは?
工芸菓子褒賞部門は、菓子職人が高度な技術を駆使して制作する芸術作品を対象としています。
一般販売されるお菓子とは異なり、展示作品としての造形美や技術力、表現力などが見どころです。
2025年の旭川大会では90点の大型工芸菓子が出展されました。和風工芸菓子と洋風工芸菓子の両方が展示され、伝統的な和菓子の技法から洋菓子の造形技術まで、多様な職人技が披露されました。
主な受賞一覧と賞の特徴
| 賞の名称 | 主な位置づけ |
|---|---|
| 名誉総裁賞 | 皇族が務める名誉総裁の名を冠した最高位の栄誉 |
| 内閣総理大臣表彰 | 国を代表する立場から優れた菓子を表彰 |
| 農林水産大臣賞 | 食品・農産物・菓子づくりに関わる優れた商品を表彰 |
| 文部科学大臣賞 | 工芸菓子などの技術・芸術性を評価する賞 |
| 外務大臣賞 | 国際的な視点から菓子文化の魅力を評価する賞 |
| 厚生労働大臣賞 | 菓子の品質や関連する分野で優れた商品を表彰 |
| 中小企業庁長官賞 | 中小菓子事業者の商品などを評価する賞 |
| 観光庁長官賞 | 地域性や観光面の魅力を持つ商品などを評価する賞 |
※大会ごとに設けられる賞や正式名称、対象部門は異なります。2025年の一般菓子部門では「内閣総理大臣表彰」という名称が使用されました。
あさひかわ菓子博2025の実際の受賞商品
2025年の公式受賞一覧を見ると、全国各地の有名銘菓から地域に根付いた商品まで、幅広いお菓子が選ばれています。
一般菓子の主な受賞例
- 名誉総裁賞:信玄餅、雪塩ちんすこうミルク風味、北の散歩道 ハスカップなど
- 内閣総理大臣表彰:さい川、氷点下41°など
- 農林水産大臣賞:桜井甘精堂の栗あん巣ごもり、夕張メロンピュアゼリーなど
工芸菓子の主な受賞例
- 名誉総裁賞:「秋麗」「瑞彩」「花美麗鳥」など
- 農林水産大臣賞:「瑞祥」「京のいろどり」「北海道物語」など
- 文部科学大臣賞:「森羅万象」「紅の季節」など
これらは第28回大会の公式受賞一覧に掲載されている実際の商品・作品です。
来場者が選ぶ賞と専門審査の賞は別物
もう一つ知っておきたいのが、専門家などによる機関賞と、来場者投票による賞の違いです。
2025年大会では、大型工芸菓子90作品を対象に、来場者がスマートフォンから投票する「感動大賞」が設けられました。
公式発表によると、投票期間中には8万人以上が会場を訪れ、最も感動した作品に投票しました。
「百獣王ライオン」
洋風工芸菓子/クラブハリエ 山本隆夫氏
来場者が選ぶ感動大賞の1位。機関賞の審査とは別の投票制度によって選ばれました。
このように、菓子博の評価には専門的な審査と一般来場者の感性という2つの視点があります。
賞の名前だけで単純な順位を判断するのではなく、どの審査制度で選ばれたのかを確認することが大切です。
【2026年最新の注目点】大垣大会で期待される新しい菓子博の姿
2029年の第29回大会に向けて、2026年時点で注目したいのは、開催地の変更だけではありません。
今回発表された基本方針には、従来の博覧会の役割を引き継ぎながら、新しい時代に対応するための考え方が盛り込まれています。
1. 伝統とイノベーションの融合
大会テーマは「世界に届け!にほんのおかし-伝統とイノベーション-」です。
これは、伝統的な和菓子や地域銘菓を守るだけでなく、現代の消費者や海外市場にも対応した新しい菓子づくりを発信する考え方です。
例えば、伝統製法を生かした新商品や、地域の農産物を活用した商品、海外の消費者にも親しみやすい菓子などが今後の注目分野になります。
2. インバウンドと海外への発信
大垣大会では、訪日外国人旅行者の需要に対応した国際的な博覧会を目指す方針が示されています。
日本のお菓子は、素材や製法だけでなく、季節感、包装、地域の歴史なども魅力の一つです。
特に和菓子は、見た目や季節の表現も文化的な価値を持っています。
海外の来場者に日本の菓子文化を伝えることは、国内の菓子メーカーにとっても新しい販路やブランド価値を考えるきっかけになります。
3. DXによる運営の効率化
2029年大会の基本方針には、DXによる新しい博覧会運営と菓子業界のデジタル化も含まれています。
旭川大会では、来場者がスマートフォンから工芸菓子の感動大賞に投票する仕組みが導入されました。
大垣大会でも、こうしたデジタル技術を活用した来場者参加型の企画や運営改善が注目されます。ただし、具体的な導入内容は今後の発表を待つ必要があります。
4. 子どもたちへの菓子文化の継承
菓子職人の技術は、一朝一夕で身に付くものではありません。
伝統的な和菓子の製法や洋菓子の造形技術を次世代へ伝えるためには、子どもたちが実際にお菓子に触れ、ものづくりの面白さを知る機会が欠かせません。
第29回大会では、未来の担い手の育成も基本方針に掲げられています。
5. 持続可能な開催モデルの確立
2025年の旭川大会で取り組まれたコンパクトな運営モデルは、2029年の大垣大会にもつながる重要なテーマです。
大規模イベントは、会場費や人件費、警備、輸送、展示設備など多くの費用がかかります。
そのため、来場者数だけを追い求めるのではなく、地域の菓子店や事業者にとって継続的なメリットがある開催方法が求められます。
大垣大会がどのような運営モデルを実現するのかは、今後の重要な注目点です。
【全国菓子大博覧会に関するよくある質問(FAQ)】
Q1:全国菓子大博覧会の次回開催はいつですか?
A1:次回の第29回全国菓子大博覧会は、2029年9月14日から9月30日までの17日間、開催される予定です。開催地は岐阜県大垣市です。
Q2:2029年の開催場所はどこですか?
A2:メイン会場は大垣市総合体育館です。ソフトピアジャパンセンターと大垣市情報工房もサテライト会場として予定されています。
Q3:あさひかわ菓子博2025の来場者数は何人でしたか?
A3:実行委員会の公式発表によると、メイン会場とサブ会場を合わせた延べ来場者数は261,336人でした。入場券の販売枚数は175,527枚です。
Q4:全国菓子大博覧会は何年に始まりましたか?
A4:1911年(明治44年)です。東京で開催された「第1回帝国菓子飴大品評会」が始まりで、2026年時点で115年の歴史があります。
Q5:名誉総裁賞と内閣総理大臣賞はどちらが上ですか?
A5:名誉総裁賞は菓子博の最高位の栄誉とされる賞です。ただし、各賞は部門や審査制度が異なるため、単純な商品ランキングとして比較するものではありません。なお、2025年大会の一般菓子部門では「内閣総理大臣表彰」という名称が使われました。
Q6:一般菓子と工芸菓子は何が違いますか?
A6:一般菓子は通常販売される商品を対象とした審査で、工芸菓子は職人が高度な技術で制作した展示作品を対象とした審査です。商品としての完成度と芸術作品としての技術・表現力という違いがあります。
Q7:2029年大会のチケットは販売されていますか?
A7:2026年10月現在、チケットの販売日や料金は正式発表されていません。主催・後援団体、詳細プログラム、来場者目標なども今後発表される予定です。
まとめ:全国菓子大博覧会は2029年の岐阜・大垣大会へ
全国菓子大博覧会は、1911年の帝国菓子飴大品評会から続く、日本の菓子文化を代表する歴史ある祭典です。
2025年の第28回あさひかわ菓子博では、延べ26万1,336人が来場し、全国の一般菓子や工芸菓子、地域の銘菓が注目を集めました。
そして2026年8月、次回となる第29回大会の開催地が岐阜県大垣市に決定しました。
2029年9月14日から30日まで開催予定の「ぎふ菓子博in大垣2029(仮)」では、伝統とイノベーションをテーマに、日本のお菓子を世界へ発信する構想が掲げられています。
今後の注目ポイントは、次の4つです。
- 2027年に予定される博覧会旗の伝達式
- 2029年大会の正式名称や詳細プログラムの発表
- 名誉総裁賞や内閣総理大臣表彰などの審査・褒賞制度
- DXやインバウンドを取り入れた新しい博覧会の運営
全国菓子大博覧会は、お菓子を食べて楽しむだけのイベントではありません。全国の職人が培ってきた技術、地域に根付いた食文化、生産者の努力、そして次世代へ受け継ぐべき日本の伝統が集まる場所です。
2029年の大垣大会が、岐阜の銘菓と全国の菓子文化をどのように結び、新しい時代の菓子博を実現するのか。今後の公式発表と準備の進展に注目が集まります。 (出典: 全国 菓子 大 博覧 会(Yahoo!ニュース))