【まず知っておきたい】馬の毛色は何種類?14種類と8種類の違い
馬の毛色は、どの登録基準を採用するかによって種類の数が変わります。ここが、初心者が最初につまずきやすいポイントです。
公益社団法人日本馬事協会が定める「馬の毛色及び特徴の記載要領(第8版)」では、馬の毛色を14種類に分類しています。一方、JRAのサラブレッド講座では、サラブレッドの毛色を8種類と紹介しています。
つまり、14種類と8種類という数字は矛盾しているわけではありません。対象とする馬の範囲や登録上の分類が異なるのです。
サラブレッドの基本となる8種類
競馬でよく見かける毛色は、次の8種類です。
1. 栗毛(くりげ)
2. 栃栗毛(とちくりげ)
3. 鹿毛(かげ)
4. 黒鹿毛(くろかげ)
5. 青鹿毛(あおかげ)
6. 青毛(あおげ)
7. 芦毛(あしげ)
8. 白毛(しろげ)
それぞれの色には明確な特徴があります。特に、鹿毛と栗毛、青鹿毛と青毛、芦毛と白毛は、見た目が似ているため注意が必要です。
馬全般の登録で使われる14種類
日本馬事協会の記載要領では、上記の8種類に加えて、次の6種類も分類されています。
- 粕毛(かすげ): 原毛色に白い毛が混ざり、主に首や胴体、四肢の上部などに現れる毛色。
- 駁毛(ぶちげ): 体に大きな白い斑点がある毛色。
- 月毛(つきげ): クリーム色から淡い黄白色までの毛色。パロミノもこの分類に属する。
- 河原毛(かわらげ): 淡い黄褐色から亜麻色に近い被毛で、たてがみや尾、四肢の下部が黒い。
- 佐目毛(さめげ): 象牙色の被毛と長毛を持ち、青い目とピンク色の皮膚が特徴。
- 薄墨毛(うすずみげ): 薄墨色の被毛で、長毛と四肢の下部が黒い。
これらは競走馬だけでなく、さまざまな品種の馬を理解するうえでも役立つ分類です。
【徹底比較】栗毛・鹿毛・青毛・芦毛・白毛の特徴と見分け方
毛色を見分けるときは、胴体だけを見て判断するのではなく、たてがみ、尾、脚の下部、目の周辺なども確認します。
JRAが紹介している代表的な競走馬を例にすると、それぞれの毛色の特徴が理解しやすくなります。
1. 栗毛|明るい茶色から濃い黄褐色
栗毛は、黄褐色の被毛を持つ馬です。明るい金色に近い色から、濃い赤茶色まで幅があります。
たてがみや尾の色は、胴体より濃い場合もあれば、反対に白っぽくなる場合もあります。栗毛の代表的な競走馬として、JRAはオルフェーヴル、グラスワンダー、タイキシャトル、ダイワスカーレットなどを挙げています。
栗毛の中でも、前髪・たてがみ・尾が白っぽい馬は「尾花栗毛」と呼ばれます。尾がススキの穂のように見えることが名前の由来です。
2. 栃栗毛|黒みを帯びた深い茶色
栃栗毛は、栗毛よりも黒みが強い黄褐色の毛色です。非常に濃い色合いになると、黒鹿毛や青鹿毛と見間違えることもあります。
ただし、栃栗毛は黒色そのものにはなりません。たてがみや尾の色にも幅があり、被毛との色の組み合わせが特徴です。
JRAが代表例として紹介する競走馬には、サッカーボーイ、サクラローレル、マーベラスサンデーなどがいます。
3. 鹿毛|胴体が茶色で脚元と長毛が黒い
鹿毛は、明るい赤褐色から暗い赤褐色の被毛を持ち、たてがみ・尾・四肢の下部が黒色になる毛色です。
栗毛との見分け方は、長毛と脚元の色にあります。栗毛では長毛や脚の下部が黒くならないのに対し、鹿毛では黒色になります。
JRAの資料では、ディープインパクト、ウオッカ、ロードカナロア、ジェンティルドンナ、キタサンブラックなどが鹿毛の代表例として紹介されています。
4. 黒鹿毛|黒に近い赤褐色
黒鹿毛は、赤褐色に黒みが加わった毛色です。個体によっては、遠くから見ると全身が黒色に見えるほど濃い色合いになります。
ただし、目の周辺、腋、腹部、内股などに褐色が残ることが特徴です。たてがみや尾、脚の下部は黒色になります。
代表的な競走馬には、ナリタブライアン、スペシャルウィーク、ブエナビスタなどがいます。
5. 青鹿毛|ほぼ全身が黒色に見える毛色
青鹿毛は、全身のほとんどが黒色で、目や鼻の周辺、腋などにわずかな褐色が見られる毛色です。
黒鹿毛よりもさらに黒く見えることがあり、青毛との区別も簡単ではありません。顔周辺の微妙な色の違いが判断材料になります。
JRAの代表例には、マンハッタンカフェ、メジロラモーヌ、フェノーメノなどが挙げられています。
6. 青毛|被毛もたてがみも黒色
青毛は、胴体の被毛だけでなく、たてがみや尾も黒色になる毛色です。
軽種馬では比較的少なく、黒鹿毛や青鹿毛と間違われることもあります。また、季節によって毛先が褐色になることがあり、黒一色に見えない場合もあります。
代表的な競走馬として、JRAはシーザリオ、ヴィルシーナ、ヴィブロスを紹介しています。
7. 芦毛|年齢とともに白く変化する
芦毛は、原毛色に白い毛が混ざり、成長するにつれて白い毛の割合が増えていく毛色です。
生まれたばかりの芦毛は、栗毛や鹿毛などの原毛色が強く残っていることがあります。その後、年齢とともに白色化が進み、最終的には全身が白く見える場合もあります。
ただし、白くなる速度は個体によって異なります。JRAが紹介する代表的な芦毛の競走馬は、オグリキャップ、メジロマックイーン、クロフネ、ゴールドシップなどです。
8. 白毛|生まれたときから全身の大部分が白い
白毛は、出生時から被毛の大部分が白色になっている毛色です。芦毛とは異なり、成長による白色化を待つ必要がありません。
皮膚はピンク色で、一部に色素を持つ斑点が現れることがあります。また、目が青色の個体もいます。
JRAが紹介する白毛の代表例はユキチャンとブチコです。白毛はサラブレッドの中でも珍しく、競馬ファンからも強い関心を集める毛色です。
8種類の特徴を一覧で比較
一目で見分けられるよう、主要な特徴と代表馬を整理しました。
出典:JRA「毛色の種類:サラブレッド講座」。
【遺伝の仕組み】馬の毛色は親からどう受け継がれる?
馬の毛色を理解するうえで欠かせないのが遺伝子です。毛色は単に親馬の見た目を引き継ぐのではなく、複数の遺伝子の組み合わせによって決まります。
基本となる3つの毛色と2つの遺伝子
カリフォルニア大学デービス校の獣医学部にあるVeterinary Genetics Laboratory(VGL)は、馬の基本的な毛色として、栗毛・鹿毛・青毛に相当するチェスナット、ベイ、ブラックの3種類を説明しています。
この基本色には、主にMC1R遺伝子とASIP遺伝子が関係しています。
MC1R遺伝子
MC1Rは、赤系と黒系の色素の生成を調節する遺伝子です。劣性型の組み合わせでは赤色系の色素のみが作られ、栗毛の基本的な色につながります。
ASIP遺伝子
ASIPは、黒色の色素を体のどこに分布させるかに関係します。優性型では黒色がたてがみや尾、脚の下部などに限定され、劣性型が2つそろうと黒色が全身に分布するようになります。
この2つの遺伝子の組み合わせが、基本となる毛色の違いを生み出します。
同じ毛色の親から違う色の子馬が生まれる理由
興味深いのは、同じ鹿毛の親馬同士を交配しても、必ず鹿毛の子馬が生まれるわけではないことです。
VGLが紹介する遺伝モデルでは、赤色因子とアグーチ因子の両方についてヘテロ接合型の鹿毛同士を交配した場合、子馬の基本毛色は次の確率になります。
- 鹿毛:56.25%
- 栗毛:25%
- 青毛:18.75%
これは特定の遺伝型を持つ親同士を交配した場合の理論値です。すべての鹿毛同士の交配に当てはまる数字ではありません。
芦毛と白毛は遺伝的にも異なる
芦毛は、基本となる毛色の上に白色化の特徴が加わったものです。白毛とは発生の仕組みが異なります。
一方、JRAの競馬用語辞典では、白毛の発生について、優性白とサビノ白という2つの機序を説明しています。どちらもc-KIT遺伝子の変異が関係しており、家系によって変異の種類が異なります。
つまり、見た目が白いという共通点だけで、同じ遺伝的特徴を持つとは限らないのです。
【2026年最新情報】芦毛の白色化をめぐる新しい研究成果
馬の毛色に関する研究で注目したいのが、芦毛の白色化の速度に関する発見です。
JRAが公開した「第66回競走馬に関する調査研究発表会(2024年度)」の講演要旨には、サラブレッドにおける「白色化しにくい芦毛」の研究が掲載されています。
4~5歳になっても白くならない芦毛を発見
一般的な芦毛は、3~5歳ごろに白色化が進行するとされています。しかし、研究チームは芦毛として登録されているにもかかわらず、4歳や5歳になってもほとんど白くならない競走馬を確認しました。
2021~2023年にJRAのトレーニングセンターに在厩していた馬を対象に調査したところ、白色化しにくい芦毛が3頭見つかりました。
さらに、この3頭は同じ母馬から生まれていたことが判明しました。その母馬自身も10歳を過ぎてから白色化が始まり、12歳で部分的な白色化が確認されたと報告されています。
STX17遺伝子の重複回数が鍵だった
研究では、芦毛の原因となるSTX17遺伝子を解析しました。その結果、通常の芦毛と白色化しにくい芦毛では、第6イントロンと呼ばれる領域の重複回数に違いが見つかりました。
研究で示されたSTX17遺伝子の違い
1回
非芦毛
2回
遅発性芦毛
3回
通常の芦毛
研究チームは、白色化に時間がかかるタイプを「遅発性芦毛」と呼んでいます。今回の3頭については、母馬に生じた突然変異が子馬に受け継がれた可能性が考察されています。
ただし、この研究は確認された家系と個体に基づく成果です。すべての芦毛の白色化の速度を、この3頭だけで説明できるわけではありません。
研究発表では、今後の課題として簡易検査法の開発や、日本のサラブレッド集団における遅発性芦毛の存在状況の調査が挙げられています。
2026年に馬の毛色を調べる際、この研究は重要なポイントです。芦毛は年齢を重ねれば一律に同じ速度で白くなる、という単純な理解では捉えきれないことが分かってきました。
【ネットの反応・炎上・噂の真相】白い馬はすべて白毛なのか?
馬の写真や競馬映像が話題になると、毛色の分類についてさまざまな疑問が生まれます。特に混同されやすいのが、白毛と芦毛、そしてアルビノです。
噂1:白い馬はすべて白毛?
これは誤解です。
芦毛は出生時には原毛色が残っており、成長とともに白色化します。白毛は、生まれたときから全身の大部分が白色です。
成馬になって白く見えるという理由だけで、白毛と判断することはできません。生まれたときの毛色や登録情報が重要です。
噂2:白毛はアルビノなのか?
これも正確ではありません。
JRAの説明によると、白毛の馬には眼の色素があり、ピンク色の皮膚にも一部に色素を持つ斑点が見られます。そのため、一般にイメージされるアルビノと同じものではありません。
白毛は、特定の遺伝子変異によって被毛の色が白くなる毛色です。見た目が白いことと、アルビノであることは別の問題です。
噂3:芦毛は必ず真っ白になる?
必ずしもそうではありません。
JRAとJAIRSの資料では、芦毛の白色化の程度や進行速度には個体差があると説明されています。純白に近づく馬もいれば、原毛色をある程度残したままの馬もいます。
さらに、2024年度の研究発表では、通常より白色化が遅い芦毛の存在も示されています。
噂4:毛色によって競走能力が変わる?
毛色と競走能力は、別々に考える必要があります。
例えば、芦毛のオグリキャップやゴールドシップ、栗毛のオルフェーヴル、鹿毛のディープインパクトは、それぞれ異なる毛色を持ちながら競馬史に名を残しました。
毛色の分類は、被毛や色素の特徴を示すものです。毛色だけで速さ、スタミナ、気性、勝負強さを判断することはできません。
ネットの反応を読み解くときの注意点
白い馬の画像が拡散されると、見た目の印象から「白毛ではないか」「アルビノではないか」といった話題になりやすいものです。しかし、写真の色調や照明、季節による毛の変化だけでは、正式な毛色を確定できません。
また、SNSで炎上しているという情報や、珍しい毛色に関する噂があっても、それだけで事実とは判断できません。個別の馬については、JRAの競走馬情報やJAIRSの登録情報を確認するのが確実です。
ネット上の反応と登録上の事実を分けて考えることが、毛色に関する噂の真相を見極める近道です。
【プロの結論】馬の毛色を正確に見分けるための3つの判断基準
馬の毛色を理解するうえで大切なのは、色の印象だけで判断しないことです。実際に馬を観察するときは、次の3つを意識すると分類しやすくなります。
判断基準1:たてがみと脚元を確認する
茶色の馬を見たら、まずたてがみと尾、脚の下部を観察します。
- 黒い長毛と黒い脚元なら鹿毛の可能性が高い
- 黒くならない長毛なら栗毛の可能性が高い
- 全身が黒に近く、顔周辺に褐色があれば青鹿毛や黒鹿毛を検討する
特に栗毛と鹿毛の違いは、初心者でも覚えやすい識別ポイントです。
判断基準2:出生時から現在までの変化を見る
白い馬を見分けるなら、現在の色だけでなく、子馬時代の写真を確認するのがおすすめです。
- 生まれたときから大部分が白いなら白毛
- 成長に伴って白い毛が増えたなら芦毛
- 首や胴体など特定の部位に白い毛が混ざり、年齢による変化が少ないなら粕毛
この3つは、見た目だけでは判断を間違えやすい組み合わせです。
判断基準3:公式登録の毛色を確認する
最終的な判断では、競走馬の登録情報や血統書などの公式記録を優先しましょう。
馬の個体識別では、毛色だけでなく、顔の白斑や脚の模様、旋毛なども利用されます。旋毛とは、毛が渦を巻くように生えている部分のことで、馬ごとの特徴を確認する材料になります。
つまり、毛色は馬の個性を表す重要な情報ですが、一頭一頭を識別するためには複数の特徴を組み合わせる必要があります。
【よくある質問】馬の毛色に関するFAQ
Q1:馬の毛色は全部で何種類ありますか?
日本馬事協会の馬全般の登録基準では14種類です。一方、JRAのサラブレッド講座では8種類に分類されています。対象とする馬や登録基準によって数字が異なります。
Q2:一番珍しい馬の毛色は何ですか?
サラブレッドでは白毛が非常に珍しい毛色として知られています。JRAも白毛を特徴的な毛色として紹介しており、代表例にはユキチャンやブチコがいます。
Q3:芦毛と白毛の違いは何ですか?
芦毛は生まれたときの原毛色から成長とともに白色化します。白毛は出生時から全身の大部分が白色です。
Q4:栗毛と鹿毛はどう見分けますか?
たてがみや尾、脚の下部を確認します。鹿毛はこれらが黒色になりますが、栗毛は黒くなりません。
Q5:親馬と同じ毛色の子馬が必ず生まれますか?
必ずしも同じにはなりません。MC1RやASIPなど複数の遺伝子の組み合わせによって、子馬の毛色が決まります。
Q6:馬の毛色は年齢によって変わりますか?
芦毛は年齢とともに白色化することが一般的です。また、季節によって被毛の見た目が変わる馬もいます。ただし、すべての毛色が同じように変化するわけではありません。
まとめ:馬の毛色は遺伝と成長の歴史を映す個性
馬の毛色は、単なる見た目の違いではありません。遺伝子の組み合わせ、出生時の特徴、成長による変化など、馬それぞれの生物学的な個性が反映されています。
2026年時点で押さえておきたいポイントは、次のとおりです。
- 馬全般の登録基準では14種類、サラブレッドでは8種類。
- 栗毛と鹿毛は、たてがみや脚元の色で見分けられる。
- 芦毛は成長に伴って白色化し、白毛は出生時から白い。
- MC1RやASIPなどの遺伝子が基本的な毛色を決める。
- STX17遺伝子の研究から、白色化が遅い芦毛の存在も明らかになっている。
競馬場で馬を見るときも、写真や映像で競走馬を調べるときも、毛色の知識があれば一頭ごとの違いがより鮮明になります。
特に、オグリキャップやゴールドシップのような芦毛の名馬、ユキチャンやブチコのような白毛の競走馬を見比べると、毛色が持つ奥深さを実感できるはずです。馬の毛色を知ることは、血統や遺伝、競馬文化への理解を深める入り口でもあります。
主な参考資料:公益社団法人日本馬事協会「馬の毛色及び特徴の記載要領(第8版)」、公益財団法人ジャパン・スタッドブック・インターナショナル「馬の毛色と特徴」、JRA「サラブレッド講座・毛色の種類」「競馬用語辞典」、JRA「第66回競走馬に関する調査研究発表会(2024年度)」、カリフォルニア大学デービス校Veterinary Genetics Laboratory「Equine Coat Color Genetics」。 (出典: 馬 の 毛色(Yahoo!ニュース))