【データ検証】足立区の治安は本当に悪い?2025年の犯罪件数と23区比較
足立区の治安を評価するうえで、最初に確認したいのが刑法犯認知件数だ。
警視庁が公表した2025年(令和7年)の町丁別犯罪統計を集計すると、足立区の刑法犯認知件数は4,617件。前年の4,442件から175件、約3.9%増加した。
23区の中では新宿区に次ぐ2位であり、犯罪件数だけを見ると、確かに多い区に分類される。
犯罪件数ランキングだけでは実態が見えない
ここで重要になるのが人口あたりの犯罪発生率だ。
足立区の人口は2026年1月1日時点で703,369人。23区内でも人口規模が大きく、犯罪件数が多くなりやすい条件を持っている。
2025年の犯罪件数を人口1,000人あたりに換算すると、次のようになる。
- 足立区:6.56件
- 新宿区:19.65件
- 世田谷区:4.95件
- 江戸川区:6.27件
- 渋谷区:18.50件
足立区は、人口1,000人あたりの犯罪件数では23区中11番目。総件数の2位から大きく順位を下げる。
つまり、足立区は犯罪件数そのものが少ないわけではないものの、人口規模を考慮すると、23区で突出して犯罪が多い地域とはいえない。
なお、この人口比は2025年の犯罪件数を2026年1月1日の住民基本台帳人口で割った参考値である。昼間人口や駅利用者数は含まれないため、繁華街のある区との比較には注意が必要だ。
2021年からは犯罪件数が増加傾向
もう一つ見逃せないのが長期的な推移である。
| 年 | 刑法犯認知件数 |
|---|---|
| 2019年 | 4,764件 |
| 2020年 | 3,693件 |
| 2021年 | 3,212件 |
| 2022年 | 3,664件 |
| 2023年 | 4,222件 |
| 2024年 | 4,442件 |
| 2025年 | 4,617件 |
2021年を底に4年連続で増加している。
一方、足立区の犯罪件数が最も多かったのは2001年の16,843件。2021年には3,212件まで減少し、ピーク時と比べて約80%の減少を達成した。
2025年は再び増えているものの、2001年と同じ水準に戻ったわけではない。過去の最悪期と現在を混同せず、長期的な改善と直近の増加を両方見る必要がある。
【原因を検証】なぜ足立区は治安が悪いといわれるのか?評判と実態の違い
足立区の治安が悪いといわれる理由は、犯罪件数だけでは説明できない。
背景には、過去の犯罪発生状況、報道によるイメージ形成、駅前の繁華街と住宅地が混在する都市構造がある。
理由1:2000年代初頭の犯罪件数が非常に多かった
足立区の治安イメージを語る際、2001年の16,843件という数字は象徴的だ。
当時は自転車盗などの窃盗事件をはじめ、区内の刑法犯認知件数が高い水準にあった。
その後、区は警視庁と連携し、2008年から「ビューティフル・ウィンドウズ運動」を展開。防犯活動や地域の美化、住民参加型の見守りなどを通じて、犯罪が起きにくい環境づくりを進めてきた。
犯罪件数が大幅に減少した背景には、こうした継続的な取り組みもある。
理由2:テレビやネットで形成された過去のイメージ
足立区に対する悪い評判は、実際の犯罪情勢とは別に、長年にわたって形成されてきた。
興味深いのが、足立区が2025年3月に公表した「足立区に対するイメージ調査」だ。
この調査は2024年12月6日から18日まで実施され、近隣自治体に住む18〜69歳の男女3,000人が回答した。
結果を見ると、足立区の治安の良さについて、悪い印象を持つ人は54.3%。良い印象を持つ人は10.6%だった。
ただし、前年の調査では悪い印象が59.8%だったため、5.5ポイント改善している。
さらに、治安の印象を持った理由では「なんとなくそう思う」が31.3%、「わからない」が26.5%を占めた。
実際に街を訪れて得た情報だけでなく、漠然とした印象や過去の評判が判断に影響していることがうかがえる。
理由3:駅前の繁華街と住宅地が混在している
足立区には、北千住、綾瀬、西新井、竹ノ塚など、商業施設や飲食店が集まる駅周辺が複数存在する。
こうした地域では、住民だけでなく通勤・通学者、買い物客、飲食店の利用者も多い。
その結果、駅前の町丁では自転車盗や万引きなどの認知件数が増える場合がある。
特に注意したいのは、犯罪件数の多い町丁が、必ずしも住民にとって危険な住宅地とは限らないことだ。
犯罪統計は基本的に事件が発生した場所に計上される。自宅が別の区にある人が北千住駅前で自転車を盗まれた場合でも、犯罪件数は発生場所である千住の町丁に計上される。
この違いを理解せず、町丁別の数字だけで居住環境を判断するのは適切ではない。
【罪種別に分析】足立区で多い犯罪は自転車盗?2025年の内訳
足立区の治安を具体的に考えるなら、刑法犯の総数だけでなく、どのような犯罪が多いのかを確認したい。
2025年の統計で最も多かったのは自転車盗だった。
2025年の主な犯罪発生状況
| 犯罪の種類 | 2025年の認知件数 | 前年比 |
|---|---|---|
| 自転車盗 | 1,311件 | 83件減 |
| 万引き | 565件 | 45件増 |
| 詐欺 | 376件 | 108件増 |
| 暴行 | 250件 | 59件増 |
| オートバイ盗 | 160件 | 72件増 |
| 傷害 | 140件 | 20件増 |
| 車上ねらい | 116件 | 1件減 |
| 空き巣 | 44件 | 1件増 |
| 強盗 | 16件 | 6件増 |
| ひったくり | 2件 | 2件減 |
出典:警視庁の2025年町丁別・罪種別・手口別認知件数を集計。前年比は2024年との比較。
自転車盗が全体の28.4%を占める
足立区の自転車盗は2025年に1,311件発生し、刑法犯認知件数全体の28.4%を占めた。
単純計算では、区内で警察が認知した刑法犯のおよそ3.5件に1件が自転車盗ということになる。
ただし、前年の1,394件からは83件減少している。
足立区は、自転車盗の被害の半数以上が無施錠によるものと説明している。自転車の施錠を義務付ける条例も2018年1月に施行されており、区は施錠を呼びかける取り組みを続けている。
自転車盗が多い背景には、駅まで自転車で移動する生活スタイルや、駅周辺の駐輪需要がある。
住む場所を選ぶ際には、最寄り駅までの距離だけでなく、駐輪場の管理状態や防犯カメラの設置状況も確認したい。
2025年は詐欺・オートバイ盗・暴行にも注意
自転車盗は減少した一方、増加が目立った犯罪もある。
特に詐欺は2024年の268件から2025年には376件となり、108件増加した。
オートバイ盗も88件から160件へ72件増加。暴行は191件から250件へ59件増えている。
また、足立区が公表した特殊詐欺の認知件数は、2024年の116件から2025年には173件に増加した。
こうした状況から、足立区の防犯を考える際には、自転車の施錠だけでなく、電話やSNSを利用した詐欺への警戒も欠かせない。
2026年10月9日のTBS NEWS DIGの報道では、足立区の特殊詐欺被害額は2026年1〜9月で約17億円に達したと伝えられた。また、自転車盗も8月末までに約1,000件発生し、前年同期を上回っているという。
過去のイメージとは別に、こうした身近な財産犯罪への対策が現在の課題になっている。
【地域別比較】北千住・西新井・竹ノ塚・綾瀬の治安を町丁別に検証
足立区の治安を判断する際に、区全体の数字以上に参考になるのが町丁別の犯罪発生状況だ。
警視庁の統計を2026年に集計したデータから、2025年の各エリアの主な町丁を比較する。
出典:警視庁の町丁別認知件数。駅周辺の町丁を示したもので、各駅の公式な犯罪件数合計ではない。
北千住の治安:駅前と住宅地で大きな差
主な確認地域:千住旭町・千住二丁目・千住三丁目など
北千住は足立区を代表する交通・商業の中心地だ。
JR常磐線、東京メトロ千代田線・日比谷線、東武スカイツリーライン、つくばエクスプレスが利用でき、駅周辺には商業施設や飲食店が集まっている。
2025年の町丁別データでは、千住旭町が165件、千住二丁目が106件、千住三丁目が94件だった。
千住旭町の人口1,000人あたりの認知件数は48.4件、千住二丁目は88.3件となっている。
ただし、北千住駅周辺の11町丁を集計した場合、合計487件、人口1,000人あたり16.3件となる。区全体の6.56件より高いものの、これは駅利用者や買い物客など、区外から訪れる人の影響を受けるためだ。
同じ11町丁でも、千住五丁目は8件、千住河原町は9件。駅前と少し離れた住宅地域では数字が大きく違う。
北千住全体を一括して危険と評価するのではなく、駅から自宅までの経路や、夜間の人通りを確認したい。
西新井の治安:駅周辺の自転車盗に注意
主な確認地域:西新井栄町・西新井一丁目
西新井は東武スカイツリーラインの駅を中心に商業施設や住宅地が広がるエリアだ。
2025年の犯罪件数では、西新井栄町一丁目が152件、西新井栄町二丁目が54件、西新井一丁目が44件だった。
特に西新井栄町一丁目は自転車盗が49件で、足立区内の町丁別でも最多となっている。
西新井駅周辺で暮らす場合、自転車を利用する人は駐輪環境を確認しておきたい。
一方、これらの数字は町丁ごとの総件数であり、西新井全体の住民が犯罪被害に遭う確率を示すものではない。
竹ノ塚の治安:駅周辺の町丁別データを確認
主な確認地域:竹の塚一丁目・六丁目、西竹の塚二丁目
竹ノ塚は東武スカイツリーライン沿線の住宅・商業エリアだ。
2025年の犯罪認知件数は、竹の塚六丁目が97件、竹の塚一丁目が84件、西竹の塚二丁目が52件だった。
自転車盗についても、竹の塚六丁目で44件、竹の塚一丁目で29件が認知されている。
駅前の駐輪場を日常的に使う人は、施錠設備や管理体制を確認しておくと安心につながる。
また、駅周辺の繁華街と、少し離れた戸建て・集合住宅の多い地域では、夜間の人通りや街灯の状況が異なる。物件探しでは最寄り駅だけで判断しないことが大切だ。
綾瀬の治安:犯罪件数の多い町丁と住宅環境を分けて考える
主な確認地域:綾瀬二丁目・三丁目・四丁目
綾瀬は東京メトロ千代田線とJR常磐線の利用者が集まる地域で、駅周辺には飲食店や商業施設がある。
2025年の町丁別件数は、綾瀬三丁目が96件、綾瀬四丁目が94件、綾瀬二丁目が47件だった。
自転車盗は綾瀬三丁目28件、四丁目26件、二丁目20件となっている。
また、粗暴犯は綾瀬三丁目で11件認知されている。
一方、同じ足立区の北千住周辺と同様、駅前の犯罪件数には通勤・通学や買い物などで訪れる人の影響もある。
綾瀬に住むことを検討している場合は、駅前の印象だけでなく、住宅街の道路や帰宅ルートを歩いて確認したい。
【2026年最新】足立区の治安は改善している?現在の犯罪情勢と防犯対策
2025年の年間データだけでは、2026年現在の治安を十分に把握できない。
警視庁は2026年10月15日に統計ページを更新し、2026年9月累計の町丁別・罪種別・手口別認知件数を公開している。
2026年の年間確定値はまだ出ていないため、2025年の通年データと2026年の途中経過を混同しないことが重要だ。
2026年1〜6月は前年同期より534件増加
足立区が公表した2026年1〜6月の犯罪発生状況は次のとおりだ。
- 2026年1〜6月:2,666件
- 2025年1〜6月:2,132件
- 前年同期との差:534件増
- 増加率:約25.0%
特に2026年6月は557件で、前年同月の367件から190件増加した。
これは同じ6か月間を比較した数字であり、単純な通年比較よりも現在の動きを把握しやすい。
2026年の足立区は、過去の犯罪減少だけを根拠に安心できる状況ではなく、直近の増加にも目を向ける必要がある。
2026年に注意したいのは特殊詐欺と自転車盗
2026年10月の報道では、足立区内の特殊詐欺被害額が9月末までに約17億円に達した。
また、自転車盗も8月末までに約1,000件発生したと報じられている。
こうした状況を踏まえると、日常生活で特に注意したいのは次の3点だ。
- 自転車盗対策:短時間の駐輪でも必ず施錠し、可能なら補助錠も使う。
- 特殊詐欺対策:警察官や銀行員を名乗る電話でも、その場で個人情報や口座情報を伝えない。
- 住宅侵入対策:短時間の外出でも施錠し、玄関や窓の防犯設備を確認する。
足立区の2025年の住宅対象侵入窃盗は71件。空き巣44件、忍込み19件、居空き8件だった。
自転車盗のように駅前へ集中する犯罪とは異なり、住宅への侵入犯罪は住宅地でも注意が必要だ。
警視庁犯罪情報マップで地域の情報を確認する
引っ越しや通学先の検討では、警視庁の犯罪情報マップも役立つ。
このマップでは、次のような情報を地図上で確認できる。
- 侵入窃盗やひったくりなどの犯罪情報
- 子どもや女性に対する声かけ・つきまといなどの前兆事案
- 特殊詐欺につながるアポ電情報
町丁別の年間件数を見る統計データとは役割が異なり、身近な地域で注意すべき情報を確認するためのものだ。
年間統計と犯罪情報マップを併用すれば、過去の発生状況と直近の注意情報を分けて把握できる。
【プロの結論】足立区は住みやすい?治安を見極める判断基準
足立区の治安を正しく評価するには、犯罪件数、人口規模、町丁ごとの特徴、生活環境の4つを組み合わせる必要がある。
2025年の犯罪件数は23区で2位だが、人口1,000人あたりでは11位。過去のピークから大幅に減少した一方、2025年は前年より増加し、2026年も途中経過では前年同期を上回っている。
この両面を理解したうえで、実際の生活環境を見極めたい。
足立区で暮らすメリットと注意点
足立区には、北千住の交通利便性、西新井や竹ノ塚の駅周辺の商業環境、綾瀬の鉄道アクセスなど、地域ごとに異なる特徴がある。
また、区はビューティフル・ウィンドウズ運動をはじめ、地域の美化や防犯活動を継続している。
ただし、利便性の高い駅前には人が集まり、犯罪認知件数も増えやすい。静かな住環境を求める人は、駅から少し離れた住宅街も候補に入れるとよい。
足立区が向いている人
- 鉄道アクセスや駅周辺の買い物環境を重視する人
- 下町の商店街や地域コミュニティに魅力を感じる人
- 駅前と住宅街の違いを理解して物件を選べる人
- 自転車や住居の防犯対策を日常的に実践できる人
慎重に検討したい人
- 夜間も静かな環境を最優先したい人
- 駅前の飲食店や人通りの多さが苦手な人
- 自宅周辺の街灯や人通りを確認せずに物件を決めようとしている人
- 自転車を長時間、屋外に無施錠で置くことが多い人
重要なのは、足立区という行政区単位で決めつけないことだ。
同じ北千住でも駅前と住宅街では状況が異なり、同じ西新井や綾瀬でも町丁によって犯罪の種類や件数が違う。
物件を選ぶときには、最寄り駅から建物までの道、夜間の明るさ、駐輪場の管理状況、建物の防犯設備を自分の目で確認したい。
【足立区の治安】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:足立区は2026年現在も治安が悪いですか?
A1:2025年の刑法犯認知件数は4,617件で23区中2位ですが、人口1,000人あたりでは11位です。犯罪件数は2021年以降増加しており、2026年も前年同期を上回る時期がありました。区全体を一律に危険と判断するのではなく、町丁ごとの犯罪状況を確認することが大切です。
Q2:足立区で犯罪件数が多い地域はどこですか?
A2:2025年の町丁別では、千住旭町165件、西新井栄町一丁目152件、千住二丁目106件、竹の塚六丁目97件、綾瀬三丁目96件などが多い地域でした。ただし、駅周辺の商業・交通利用者による影響もあるため、件数だけで住宅地の安全性を判断することはできません。
Q3:足立区では自転車盗が多いのですか?
A3:はい。2025年の自転車盗は1,311件で、刑法犯認知件数の28.4%を占めました。前年から83件減少したものの、依然として最も多い手口です。自転車には短時間でも鍵をかけ、必要に応じて補助錠を併用しましょう。
まとめ:足立区の治安は区全体ではなく町丁単位で判断しよう
2026年現在の足立区の治安を検証すると、犯罪件数の多さという課題がある一方、人口あたりの数値や過去からの改善状況を見ることで、単純なイメージとは異なる実態が浮かび上がる。
2025年の刑法犯認知件数は4,617件、自転車盗は1,311件。人口1,000人あたりでは6.56件で、23区中11番目だった。一方、2026年は前年同期より犯罪件数が増えており、特殊詐欺や自転車盗への対策が引き続き必要だ。
北千住、西新井、竹ノ塚、綾瀬にはそれぞれ異なる特徴があり、同じ駅周辺でも町丁によって犯罪件数は大きく異なる。足立区という名前だけで危険と決めつけるのも、過去の改善実績だけを見て安心するのも適切ではない。
住む場所を選ぶ際には、警視庁の町丁別犯罪統計と犯罪情報マップを確認し、昼と夜の両方で現地を歩いてみることが重要だ。数字と実際の生活環境を照らし合わせることが、足立区で安心して暮らすための最も現実的な判断方法となる。 (出典: 足立 区 治安(Yahoo!ニュース))